過去の採択者のインタビュー

沖縄の地域課題に挑む、新たなスポーツビジネスの形
ワールドカップを“一過性”で終わらせたくなかった

インタビュー

「スポーツイベントを開催して終わりではなく、その先に何を沖縄へ残せるのかを考えたかったんです。」
そう語るのは、一般社団法人 Arch to Hoop 沖縄の事務局長・勝田氏。
沖縄ではバスケットコートレンタル事業を通じて、社会から孤立しがちな無就業の若者たちの社会参画マインドを育む取り組みを行っている。

Arch to Hoop 沖縄が立ち上がったきっかけは、2023年に沖縄で開催されたバスケットボールワールドカップだった。
大会運営に携わる中で見えてきたのは、「スポーツの盛り上がり」が、必ずしも地域全体に届いていないと勝田氏は振り返る。
「スポーツ業界の中ではワールドカップ開催で大きく盛り上がっていました。ただ、現地に入ってみると、その熱量が届いていない子どもたちや家庭もたくさんあったんです。」
特に沖縄では、子どもの貧困や不登校、若者の孤立といった課題が全国的にも高い水準にある。
その中で、“スポーツに触れる機会そのもの”へアクセスしづらい子どもたちの存在を知り、勝田氏たちはスポーツを通じて子ども・若者が社会とつながる機会づくりに取り組み始めた。

「スポーツの裏側」にある、たくさんの仕事

インタビュー

今回、補助金を活用して取り組んだのは、移動式バスケットコートのレンタルサービス事業。
短時間でバスケットコートを設営できる仕組みを活用し、地域イベントや子ども向け企画などへ“スポーツができる場”を届けるプロジェクトだ。
ただ、この取り組みの本質は、単なるコートレンタルではない。
「スポーツイベントって、どうしても華やかな部分だけが見られがちなんです。でも実際には、その裏側にたくさんの仕事があります。」
機材の運搬や設営、安全確認、マニュアル作成、チラシ制作、WEB更新、備品管理、イベント運営。

インタビュー

プロジェクトを進める中では、競技そのもの以外にも数多くの役割が生まれていった。
特にマニュアル整備や備品管理、現場の設営などを担ったのが地域の若者たちだった。
Arch to Hoop 沖縄では、地域のNPOと連携しながら、就労に困難を抱える若者たちがプロジェクトへ参加できる環境づくりを進めている。
「スポーツが得意じゃなくてもいいんです。イベントを支える仕事、マニュアルを作る仕事、備品を管理する仕事。いろんな関わり方がある。」
「実際に、プロジェクトに関わる中で“自分にもできることがある”と感じてくれた若者たちがいました。」
スポーツを“見る”“プレーする”だけでなく、“支える側”として関わる。
その経験が、若者たちにとっての自己効力感や、次の一歩につながっていったという。

ボランティアではなく対価を生み出す

インタビュー

今回の補助金で特に大きかったのは、「構想」を「事業」として形にできたことだった。
これまでArch to Hoop 沖縄では、多くの活動を企業からの寄付金ベースで実施してきた。
しかし、継続的に地域へ価値を届けていくためには、“収益化”という視点が避けて通れなかったという。
「ずっと、自分たちで収益を上げられる活動にしたいという構想はありました。」
補助金を活用したことで、WEBサイト改修やプロモーション動画制作、販促ツール整備など、サービスを社会へ実装するための基盤づくりを進めることができた。
現在も問い合わせの多くはWEB経由で届いているという。

さらに、若者や支援施設の職員に対して、対価が循環する事業設計に踏み出せたことも大きな意味を持った。

インタビュー

「スポーツ機材の設営や運搬は、安全面も含めて丁寧な指導が必要です。だからこそ、協力いただく若者たちや施設職員へ、きちんと対価を支払える環境を作れたのは大きかったですね。」
“地域課題の解決”を掲げるプロジェクトは、どうしてもボランティアベースになりやすい。
しかし、勝田氏は「続けるためには、経済を回す必要がある」と話す。
「スポーツを通じた社会課題解決って、どうしても収益化が難しい部分があります。でも、だからこそ“事業として成立させる”ことに向き合う必要があると思っています。」

沖縄だからこそ生まれる可能性

インタビュー

話しを聞いていて印象的だったのは “沖縄らしさ”だった。
沖縄は、全国的に見てもバスケットボール熱が高く、地域のお祭りやイベントが多い。
一方で、スポーツ産業全体として見ると、マーケット規模や事業者数、スポンサー環境など、多くの課題も抱えている。
「沖縄のスポーツ産業は、まだまだこれから伸びていく余地が大きい分野だと思います。限られたリソースの中で挑戦している事業者も多いからこそ、新しい事業モデルをつくる意味があると感じています。」
勝田氏は沖縄だからこそ挑戦できる価値があると語る。
今回の事業は、子どもや若者の孤立、地域コミュニティ、居場所づくり、就労支援などの要素とスポーツを組み合わせて地域の課題へアプローチしている。
「スポーツは、一部の人だけのものではなくて、いろんな人が関われるものだと思っています。」
「イベントの裏側には、本当にたくさんの仕事とドラマがある。そのことをもっと知ってもらいたいですね。」

“ぼんやりした構想”を、実装するきっかけに

インタビュー

「補助金ありきでゼロから考えるというより、“もともとやりたかった構想”を実装するきっかけとして活用すると、すごく良いと思います。」
今回の補助金では、アドバイザーによる伴走支援も行われた。
企業や行政の職員研修といったコートレンタル以外の収益アイデアについて壁打ちできたことも、大きな価値だったという。
「本当にサービスとして成立するのかを、丁寧に検証できる機会になりました。」
「ぼんやりでもいいので、“こういうことをやりたい”という想いがある人には、ぜひ挑戦してほしいですね。」
また、今回の取り組みを通して見えてきたのは、“スポーツ産業”の可能性の広さだったという。
一般的にスポーツビジネスというと、プロチームや大規模イベントなど華やかなイメージを持たれやすい。しかし実際には、その裏側に数多くの仕事や役割が存在している。
「スポーツが好きだから関わる」というだけではなく、設営、広報、運営、管理、制作など、それぞれの得意を活かせる仕事がある。だからこそ、これまで社会との接点を持ちづらかった若者たちにとっても、“関われる入口”になり得ると勝田氏は話す。
「スポーツって、プレーする人だけのものではないと思うんです。イベントの裏側にも、地域を支える役割がたくさんある。その一つ一つが仕事になり、誰かの挑戦につながっていく。」

Arch to Hoop 沖縄の挑戦は、単なるスポーツ事業にとどまらず、地域に体験機会と仕事、そして人とのつながりを生み出す取り組みとして今も進化を続けている。

今後は、コートレンタル事業に加えて、企業・行政向けのチームビルディングや社会課題への理解促進研修への展開も検討している。スポーツを地域イベントのにぎわいづくりだけでなく、人と人が関わり、組織の学びにもつながる場として広げていく考えだ。

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